肺癌のステージ、手術、治療、転移

肺腺がん(肺腺癌)について

肺癌でもQOL(生活の質)を維持するために

肺癌治療の第一歩は正しい現状把握から

このページをご覧頂いているのは、肺がんと診断された患者様や、ご家族・ご親戚・ご友人など大切な方が肺がんと診断された方だと思います。
これから肺癌の治療を受ける方や現在治療中の方や一通り肺癌治療を行ったが再発や転移が不安だという方もいらっしゃるかもしれません。

進行肺癌のため手術適応とならない方や、手術後に放射線治療や抗がん剤の治療、分子標的薬の治療など積極的治療を行ってきたが、治療の甲斐なく肺がんの病状進行を抑えることができず医師から辛い宣告をされた方もいらっしゃることでしょう。

肺癌治療においては、主に外科的手術放射線療法化学療法(抗がん剤等)などの治療が柱となります。

しかし肺癌は初期症状に乏しく、早期発見が困難ながんで、有効な治療法が少ない状態が続いています。そのため肺癌は難治癌とよばれています。

肺癌により咳や血痰、喘鳴(ぜいめい)、息切れなどの症状があらわれた時には既に進行肺癌(進行肺癌)となっていることが多いですし、さらに胸部痛や呼吸困難、背部・腰部の痛み、など自覚症状が現れたときには既に転移していて手術適応とならないことも少なくありません。

肺癌が進行してしまうと手術ができなくなり、癌根治を目指すことが難しくなってしまいますが、患者様のQOL(生活の質)を維持し元気・食欲を維持していくために体力を付け、免疫を整えていく事は意義があると考えます。

肺癌は組織型の違い「肺腺がん(腺癌)」、「肺扁平上皮がん(扁平上皮癌)」、「大細胞がん(大細胞癌)」、「小細胞がん(小細胞癌)」によって性質が異なります。そろぞれの癌については各ページを参考にしてください。

肺癌は手術しただけでは安心できない

肺癌の手術は体への負担も大きく難しい手術ではありますが、現時点では手術以外に肺癌を治すことができる治療がないと考えられているため、条件にもよりますが手術は優先度の高い治療になります。

過酷な手術を乗り越えたとしても安心はできません。ステージ1の早期がんで手術を行い、きれいに癌を切除できても(根治手術後でも)5年生存率はわずかに60-70%、ステージ2では40-50%、手術適応となったステージ3Aでは20%程度と決して満足できる結果が得られていないのが肺癌の手術なのです。

手術後に再発してしまうことも少なくないため、肺癌の手術後には5年をめどにフォローアップ(経過観察)が行われます。胸部X線写真や腫瘍マーカー検査、胸部CT検査などを行っていくことになります。
肺癌の根治手術後、進行度によっては再発を予防する目的で化学療法(抗がん剤治療)が積極的に行われますが、副作用に苦しんでいる方が多く見受けられますし、抗がん剤の治療を受けたからといって再発しなくなるというものでもありません。

手術後に抗癌剤治療を受けることで「統計的に数%再発のリスクが低くなる」ということですから、副作用が強いためQOLが著しく低下してしまうようでしたら抗がん剤治療を中断したほうが患者さんの不利益が少なくなるということも十分に考慮する必要があります。
※治療継続の判断は必ず担当医師にご相談下さい。

肺癌が再発・転移した時の治療

再発を心配するあまり精神的に不安定になったり、副作用で辛い思いをしたり、あるいは病状悪化を十分に抑えることができずに苦しまれている方は本当に多く見受けられます。

手術後に再発・転移した肺癌の治療は抗がん剤の治療が中心となります。
また初診時に肝臓や副腎、骨や脳などに転移を有する進行肺癌と診断された場合は手術適応とはなりません。この場合も抗がん剤治療が中心となります。

抗癌剤治療だけで肺癌の進行を抑えることは難しく予後は非常に厳しいものがありましたが2002年に分子標的薬・イレッサの登場により、今まで治療法がないと言われていた患者様にも治療の道が開かれるようになりました。

その後もタルセバ、アバスチン、ジオトリフ、ザーコリそしてアレセンサなどの分子標的薬が使えるようになりました。

また、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる癌増殖を免疫の力で抑えて行こうという発想のオブジーボという新しい薬も使えるようになり、以前と比較すると予後が改善しましたが、それでも肺癌の進行を長期に抑え続けることは難しいのが実情です。

肺がんの再発を防ぎ充実した人生を過ごすために

肺癌の治療は手術でがん細胞を取り除いたら終わりではありません。放射線療法や化学療法(抗がん剤)で叩けば簡単に肺癌が治るわけでもありません。

根本的に肺癌を克服する、あるいは克服できなくとも肺癌との共存を目指すには、肺癌になってしまった原因が何かを考え、肺癌が再発しにくい体内環境を作ることが大切だと思います。さらには治療中、治療後の生活の質を保ち精神的にも肉体的にも安定した豊かな人生・満足度の高い人生にすることがとても大切ではないかと思います。

大学病院やがんセンターなど癌拠点病院でたとえ「治療法は無い」と告知をされてしまっても、できることはありますし、生活の質を保つ、あるいは向上させる術はあるかもしれません。

現在の治療効果が十分あり、生活の質にも満足していて、今後の不安もまったく無いのであればとてもすばらしいことだと思います。

しかし、少しでも悩まれているようであれば闇雲に治療を受け続けるのではなく、治療を補完するいろいろな方法・考え方があるということを知ることは、今後の闘病生活に役立てるものと思います。

肺癌の治療に際し、まず当HPで肺癌に関する情報を知っていただき、これからの治療に役立てていただければと思います。

肺癌情報目次

    1. 肺癌のステージ、手術、治療、転移
      今ご覧いただいているこのページです
    2. 肺癌の特徴や発生原因
      肺癌の種類(組織型)と特徴、発生原因について
    3. 肺癌の初期症状と末期症状
      初期症状や進行した時の症状について
    4. 肺癌の検査
      画像検査・血液検査・細胞診・組織診・生検について
    5. 肺癌の画像検査
      胸部単純X線検査、胸部CT検査、腹部CT検査、ヘリカルCT、マルチスライスCT、造影CT、胸部MRI検査、脳MRI検査、骨シンチグラフィー、PET検査について
    6. 肺癌の腫瘍マーカー
      腫瘍マーカー(CEAやSCC、シフラ[CYFRA21-1]、NSE、ProGRPなど)について
    7. 肺癌の組織診・細胞診(生検)
      がん細胞があることを確認する確定診断。喀痰細胞診や気管支鏡検査、擦過細胞診、経皮的肺穿刺法、胸水細胞診、縦隔鏡検査、胸腔鏡検査、開胸生検について
    8. 肺癌の進行度(ステージ)と5年生存率
      TNM分類による肺癌の進行度(ステージ)、5年生存率について
    9. 肺癌の手術・術後
      手術と術後について
    10. 肺癌の放射線療法・ガンマナイフ
      放射線療法、肺癌の放射線治療の目的、骨転移や脳転移した肺癌に対する放射線治療について
    11. 肺癌の化学療法(抗がん剤治療)
      化学療法(抗がん剤治療)、抗がん剤の種類や抗がん剤の副作用、効果判定基準について
    12. 肺癌が再発・遠隔転移時の治療
      再発、遠隔転移(肺転移、肝臓転移、骨転移、脳転移など)した場合の治療について

  1. 肺癌治療-分子標的薬イレッサ(ゲフィチニブ)
    非小細胞肺がんの治療で使用する分子標的薬イレッサ(ゲフィチニブ)について
  2. 肺癌治療-分子標的薬タルセバ(エルロチニブ)
    非小細胞肺がんの治療で使用する分子標的薬タルセバ(エルロチニブ)について
  3. 肺癌治療-分子標的薬ジオトリフ(アファチニブ)
    非小細胞肺がんの治療で使用する分子標的薬ザーコリ(クリゾチニブ)について
  4. 肺癌治療-分子標的薬ザーコリ(クリゾチニブ)
    非小細胞肺がんの治療で使用する分子標的薬ジオトリフ(アファチニブ)について
  5. 肺癌治療-オブジーボ(ニボルマブ)
    非小細胞肺がんの治療で使用するオブジーボ(ニボルマブ)について