食道がん化学療法(抗がん剤)を受ける方へ

NO IMAGE

食道癌の抗癌剤治療(化学療法)

抗癌剤治療の事を化学療法とも言います。
ここでは食道癌の患者様が化学療法(抗癌剤治療)を受ける時に知っておいていただきたい情報をまとめます。

食道癌の抗がん剤治療はどのような時に行われるのか

食道癌は進行すると周囲のリンパ節に転移し、さらに血流にのって肺や胃、肝臓、骨、脳などに転移します。

食道癌の転移の可能性が極めて低い局所にとどまった癌である場合には手術や放射線化学療法を行います。

しかし、リンパ節に転移があった場合や、転移は無くとも再発の危険が高いと判断された場合には抗がん剤療法が行われることがあります。(手術後の再発予防の目的で行う補助化学療法等)

また、食道癌が肺や肝臓、骨、脳など遠隔転移があり手術ができない場合にも化学療法(抗がん剤治療)が使われることがあります。

まとめると、化学療法(抗がん剤治療)は血流にのって全身を治療できるため、全身に広がっている進行食道癌の治療や、手術後の再発予防、再発時の治療、手術前に化学療法を行い食道癌をできるだけ小さくしてから切除を行う場合などに使われます。

食道癌の治療で用いられる代表的な抗がん剤

CF療法

C(シスプラチン)とF(フルオロウラシル=5FU)の2剤を組み合わせた治療法です。

アクプラ+5-FU

アクプラ(一般名 ネダプラチン)と5-FU(一般名 フルオロウラシル)の2剤を組み合わせることもあります。アクプラはシスプラチンの副作用を軽くする目的で開発されたプラチナ製剤です。

その他にブレオ(一般名 ブレオマイシン)、タキソール(一般名 パクリタキセル)、タキソテール(一般名 ドセタキセル)、MMC(一般名 マイトマイシン)、ファルデシン(一般名 ビンデシン)なども使用することがあります。

化学療法(抗がん剤)の副作用と効果判定

化学療法(抗がん剤)の副作用

骨髄毒性-白血球減少(好中球減少)、赤血球減少、血小板減少

食道癌の抗がん剤治療により血液をつくる細胞がダメージを受け、白血球減少や赤血球減少、血小板減少などの副作用を高頻度で生じます。

食道がんに対する化学療法では、患者さんが抗がん剤の副作用により死亡することが数%程度起こると報告されています。治療関連死で最も多いのは白血球や好中球減少による重篤な食道炎や敗血症などの感染によるものですから、これらの血液検査の数値が低下した場合には注意が必要です。

白血球減少(好中球減少)が起きると食道炎などの感染症を起こしやすくなります。また発熱が続くこともあります。白血球や好中球の減少に対しては、G-CFS(顆粒球コロニー刺激因子)などを使用することがあります。

赤血球が減少することで貧血になったり、血小板減少により出血しやすくなったり、あざができやすくなったり、注射の跡が消えにくくなるなどの副作用が現れることがあります。

これらの副作用を骨髄毒性といいます。骨髄毒性は目に見える副作用ではないため一般の方は軽視しがちですが、実は命にかかわることが少なくない副作用ですから抗がん剤の投与中は注意深く骨髄毒性が許容範囲内であるかをチェックする必要があります。

吐き気・嘔吐・悪心・下痢・便秘・食欲不振

食道癌治療で抗がん剤が投与されると多くの方で吐き気や嘔吐をおこします。下痢や便秘をする方もいらっしゃいます。

使用する抗がん剤の種類により吐き気や嘔吐が起きやすい抗がん剤もあれば、あまり激しい副作用を伴わないものもあります。場合によっては極度の脱水症状により衰弱してしまう可能性もあります。

腎機能低下(腎機能障害)

シスプラチンの副作用により腎機能低下の副作用が頻発します。そのためできるだけ多くの水分を摂るようにして尿をたくさん出す必要があります。

脱毛

食道癌治療で使用する抗がん剤によっては脱毛を起こすことはほとんどありません。髪の毛が抜けたとしても治療が終われば髪の毛は再び生えてきます。

その他の副作用

食道癌治療で用いられる抗がん剤の副作用として、動悸や息切れ、体のむくみ、筋肉や関節の痛みなどが現れることがあります。

手足症候群といって手のひらや足の裏に刺すような痛みがあったり、手足の感覚がまひしたり、皮膚の乾燥やかゆみ、変色などの症状が現れることがあります。

口内炎や倦怠感(だるさ)、皮膚や爪の変色、味覚障害、肝機能障害、腎機能障害なども副作用で現れることがあります。

食道癌治療における化学療法(抗がん剤)の効果判定

化学療法(抗がん剤治療)を続けるか止めるか

抗がん剤の治療を行う際にの目的は「がんの縮小、そして延命」、「癌の進行を止める」「癌による痛みの軽減などQOLを改善する」などになります。

治療効果が十分で、副作用が軽微であれば治療を続けるメリットは大きいと思います。

一方で治療効果がなく、副作用が強く苦しみが増しているのであれば治療を続けることが患者さんにとって大きな負担となり、時に死期を早めてしまうリスクもはらんでいます。

抗がん剤治療を行う際には治療効果が得られているのか冷静に判断をすべきです。

また抗がん剤治療は体への負担が大きいため以下のPS(全身状態)を参考に治療を行う条件を満たしているかも確認が必要です。

以下に一般状態判定基準、効果判定基準を示しますので参考にしてください。

一般状態判定基準

■一般状態判定基準

PS(Performance Status) 患者の状態
0 無症状で日常生活に支障のないもの
1 症状はあるが、日常生活に支障のないもの
2 就床を必要とするが、日中50%以上の日常生活が可能と考えられるもの
3 日常生活は可能であるが、日中50%以上就床を必要とするもの
4 1日中ほとんど離床不能なもの

PS0~3が化学療法治療対象となるが、PS3は予後が悪いことが多く薬剤感受性の良い腫瘍やPS2に近い3の症例に限った方が安全である。

治療の効果判定

■固形癌効果判定基準(RECIST)

標的病変 非標的病変 新病変 総合効果
CR CR なし CR
CR Non-CR/Non-PD なし RP
CR 評価なし なし PR
PR Non-PD or 評価の欠損あり なし PR
SD Non-PD or 評価の欠損あり なし SD
評価の欠損あり Non-PD なし NE
PD 問わない あり or なし PD
問わない PD あり or なし PD
問わない 問わない あり PD

CR:完全奏功、PR:部分奏功、SD:安定、PD:進行、NE:評価不能