胃癌のステージ、手術、治療、転移
胃癌でもQOL(生活の質)を維持するために
胃癌治療の第一歩は正しい現状把握から
このページをご覧頂いているのは、胃がんと診断された患者様や、ご家族・ご親戚・ご友人など大切な方が胃がんと診断された方だと思います。
これから胃癌の治療を受ける方や現在治療中の方や一通り胃癌治療を行ったが再発や転移が不安だという方もいらっしゃるかもしれません。
進行胃癌のため手術適応とならない方や、手術後に抗がん剤の治療、分子標的薬の治療など積極的治療を行ってきたが、治療の甲斐なく胃がんの病状進行を抑えることができず医師から辛い宣告をされた方もいらっしゃることでしょう。
初期の胃癌の方はもちろん、進行胃癌・末期胃癌の方でも取り組み次第で充実した時間を過ごすことはできると思います。
まずは胃癌の症状や検査法、治療法などについて知っていただきたいとおもいます。また患者様ご自身やご家族の方に取り組んでいただきたい事もご紹介しておりますので参考頂ければ幸いです。
胃癌分類(種類)
上皮性悪性腫瘍と非上皮性悪性腫瘍-胃がん分類(種類)
胃に発生する悪性腫瘍は、粘膜上皮より発する上皮性悪性腫瘍と上皮以外の組織より発生する非上皮性悪性腫瘍に分類されます。胃の粘膜は腺上皮によって構成されているため胃がんのほとんどは腺がんになります。他には腺扁平上皮がんや扁平上皮がん、カルチノイド腫瘍などが上皮性の悪性腫瘍に分類されます。
非上皮性悪性腫瘍には悪性リンパ腫や平滑筋肉腫などが分類されます。
腺がん-胃がん分類(種類)
胃癌のほとんどを占める腺がんはさらに分化型腺がん(乳頭腺がん、管状腺がん[高分化、中分化])と低分化腺がんや印環細胞がん、粘液がんなどの未分化型腺がんに大きく分けられます。
分化型腺がんは胃がんを顕微鏡で見たときに、がん細胞の形や並び方が胃の粘膜構造を残しているがんで比較的予後は良い癌です。
一方の未分化型腺がんは粘膜構造が少なく細胞がばらばらになってしまっているがんで、小さながんでもリンパ節や肝臓、腹膜などに転移することがある進行の早い胃がんです。
未分化型腺がんのうち小さなびらんや陥凹などわずかな粘膜変化しかおこさず胃壁の全体にがんの浸潤を認め、胃壁全体が硬くなる特殊な胃がんをスキルス胃がん(スキルス胃癌)と呼びます。胃が硬くなるため硬がんとも呼ばれます。
AFP産生胃がん(AFP産生胃がん)
胃がんの中にはAFP( α-フェトプロテイン)の値が高値になるAFP産生胃がんもあります。
AFP産生胃癌は,高度進行癌で発見されることが多く,高度なリンパ節転移や肝転移のため予後は著しく不良であることが多いがんです。
早期胃癌の治療
最近は早期の胃癌に対して内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡的治療が選択されることが多くなりました。
内視鏡的治療は早期がん(早期癌)を対象とした根治を目指せる治療法で再発率を高めることなく、体への負担も軽い治療法で、ほぼ100%根治が期待できます。
ただし、切除した病変の病理組織学的検査(組織型や浸潤度、脈管侵襲、切断断端の所見)の結果、転移のリスクがあると判定された場合にはリンパ節郭清を伴う外科手術を追加で行うことになります。
内視鏡的治療後には新たながんが発生しないよう生活習慣を改めたり免疫力を高めるなどの配慮が必要です。
進行胃癌は手術しただけでは安心できない
胃癌)外科手術は体に負担はかかりますが、進行した胃癌でも完全にがんを取りきることができれば根治が期待できる治療法です。そのため条件にもよりますが手術は優先度の高い治療になります。
進行した胃がんの場合、手術後も再発・転移の不安が残ります。進行胃癌分類、胃癌ステージ1で手術を行い、きれいに癌を切除できても(根治手術後でも)5年生存率はおよそ90%、胃癌ステージ2では80%、胃癌ステージ3A(5年生存率)では60-70%、3B(5年生存率)では50-60%、胃癌ステージ4(5年生存率)では10%程度と決して満足できる結果が得られていないのが胃がんの手術なのです。
手術後に再発してしまうことも少なくないため、胃癌の手術後には5年をめどにフォローアップ(経過観察)が行われます。術後の再発を早期に発見して治療するために、腫瘍マーカーや胸部X線検査、超音波検査、CT検査、内視鏡検査などを定期的に行います。
胃癌の手術後、進行度によっては再発を予防する目的で化学療法(抗がん剤治療)が積極的に行われますが、副作用に苦しんでいる方が多く見受けられますし、抗がん剤の治療を受けたからといって再発しなくなるというものでもありません。「統計的に数%再発のリスクが低くなる」ということですから、副作用が強いためQOLが著しく低下してしまうようでしたら抗がん剤治療を中断したほうが患者さんの不利益が少なくなるということも十分に考慮する必要があります。
※治療継続の判断は必ず担当医師にご相談下さい。
胃癌が再発・転移した時の治療
肝臓や腹膜、肺、骨、脳などにに転移を有する進行胃がんと診断された場合には通常は手術を行うことはありません。腹膜播種などがみられる場合でも手術を行うことがあるようですが、術後の経過はあまりよろしくないのが実情のようです。
胃がんが遠隔転移をきたすのは血液中やリンパ液中にがん細胞が入り込み全身を回り、肝臓や骨などにがん細胞がたどり着きそこで増殖をしたためです。そのため手術でがんをすべて取りきることはとても難しいのです。
手術で取りきることが難しい胃癌の治療は抗がん剤の治療が中心となりますが、残念なことに十分な効果が得られるケースはあまりないことを知っておく必要があります。。
手術後に広範囲に転移し手術することが難しい場合にも抗がん剤治療が中心となりますが、長期にわたり病状進行を抑えていくことは難しいですし、副作用で苦しまれていらっしゃる方も少なくありません。
再発を心配するあまり精神的に不安定になったり、副作用で辛い思いをしたり、あるいは病状悪化を十分に抑えることができずに苦しまれている方もいらっしゃいます。
早期胃がんの再発・転移を防ぎ、進行胃癌でも充実した人生を過ごすために
胃癌の治療は手術でがん細胞を取り除いたら終わりではありません。化学療法(抗がん剤)で叩けば簡単に胃癌が治るわけでもありません。
根本的に胃癌を克服する、あるいは克服できなくとも胃癌との共存を目指すには、胃癌になってしまった原因が何かを考え、胃癌が再発しにくい体内環境を作ることが大切だと思います。さらには治療中、治療後の生活の質を保ち精神的にも肉体的にも安定した豊かな人生・満足度の高い人生にすることがとても大切ではないかと思います。
大学病院やがんセンターなど癌拠点病院でたとえ「治療法は無い」と告知をされてしまっても、できることはありますし、生活の質を保つ、あるいは向上させる術はあるかもしれません。
現在の治療効果が十分あり、生活の質にも満足していて、今後の不安もまったく無いのであればとてもすばらしいことだと思います。
しかし、少しでも悩まれているようであれば闇雲に治療を受け続けるのではなく、治療を補完するいろいろな方法・考え方があるということを知ることは、今後の闘病生活に役立てるものと思います。
胃癌の治療に際し、まず当HPで胃癌に関する情報を知っていただき、これからの治療に役立てていただければと思います。
胃癌情報目次
- 胃癌のステージ、手術、治療、転移-QOL維持
今ご覧いただいているこのページです - スキルス胃がん(スキルス胃癌)について
極めて進行の早いスキルス胃がんとは?スキルス胃癌の特徴や症状等について - 胃癌の種類、発生原因
胃癌の統計や種類(組織型)、発生原因(塩分や喫煙、ヘリコバクターピロリ菌)と予防法について。 - 胃癌の初期症状、末期症状
胃がん初期症状および進行した胃癌の自覚症状について - ピロリ菌検査、ペプシノゲン検査、指触診
胃癌の問診、触診、視診、ペプシノゲン検査、ヘリコバクターピロリ菌抗体検査について - 胃癌の画像検査
内視鏡検査、内視鏡超音波検査(EUS)、CT検査(CTスキャン)・磁気共鳴画像法(MRI検査)・PET検査、造影検査、超音波検査(エコー検査)について - 胃癌の腫瘍マーカー
胃癌の腫瘍マーカー(CEAやCA19-9、AFP)について - 胃癌のステージと5年生存率
胃癌取扱い規約、TNM分類による胃癌の進行度(ステージ)、5年生存率について - 胃癌の内視鏡的治療、腹腔鏡手術、外科手術
胃癌の内視鏡的治療の適応基準や治療法、腹腔鏡手術、外科手術について - 胃癌の放射線療法
胃癌の放射線治療、胃癌の放射線治療治療の目的、骨転移や脳転移した胃がんに対する放射線治療について - 胃癌の化学療法(抗がん剤治療)
胃癌の化学療法(抗がん剤治療)、抗がん剤の種類や抗がん剤の副作用、効果判定基準について - 胃癌の再発・転移、転移後の治療について
胃癌の再発、遠隔転移(肝臓、肺、骨、脳など)について、胃がんはどこに転移するのか、転移した胃がんの治療法について